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喫煙の影響と脳内報酬系

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 今回は、喫煙習慣が個人の健康や社会に与える影響とそのメカニズムについてお話しします。

1.喫煙が全身に与える影響
 タバコの煙の中には、約200種類の有害物質と約60種類の発がん物質が含まれていると言われています。その97%はガスとして含まれていて、喫煙によりこれらの物質が体の中に取り込まれます。
 継続的に喫煙すると、口腔を初めとする消化器系、内分泌系、泌尿器系、生殖器系等の発がん率が高くなる他、心臓病、脳血管疾患、大動脈瘤、万銭閉塞性肺疾患や肺炎、喘息、骨粗鬆症、低体重児出産等々、多くの循環器疾患、呼吸器疾患、消化器疾患、生殖器疾患、泌尿器疾患等の発症にも関与することが判明しており、喫煙者は非喫煙者と比べて10年余りも生存期間が短いと言われています。

2.お口の健康と喫煙
 タバコを吸うことによって、お口の中はニコチンを初めとする大量の有害物質によって満たされます。ニコチンは歯肉の中に取り込まれ、コラーゲン線維の新陳代謝を行う細胞(線維芽細胞)が増えたり歯の表面に結合するのを妨げ、コラーゲン線維を新陳代謝する能力を変化させてしまいます。歯肉の健康に必要不可欠な健康なコラーゲン線維が、喫煙により失われてしまうのです。
 喫煙には、血行や免疫を抑制する作用もあるので、継続的に喫煙をしていると歯を支える歯肉や骨は慢性的な低酸素状態に陥り、歯周病原菌が感染しやすくなるだけでなく、歯周病によるコラーゲン線維の破壊に対する抵抗性や治癒能力が低下し、歯周病が重症化しやすくなってしまうのです。
 我々が行う歯周病治療は、体が持っている治癒能力と病原因子との力関係が逆転するような環境を整えてあげることが基本なので、治癒能力そのものが低下していれば、良い結果が期待できないのは当然です。再生治療やインプラント治療を行っても、喫煙者の場合には、非喫煙者と比べて予後がよくありません。

3.禁煙が難しい理由ーニコチン依存症
 タバコを吸うとニコチンは速やかに血中に移行し、脳のある部分(腹側被蓋野)にある受容体と言われる分子と結合します。すると脳のある部分が反応して、神経細胞から様々な物質(ドーパミン、セロトニン、ノルエピネフリン等)が放出され、食欲抑制、覚醒、ある種の快感、記憶力や認知能力の向上、不安や緊張の軽減等の作用が現れます。この時に反応する部分は、「脳内報酬系」と言われ、本来は何らかの活動を通して他人や社会に貢献したときに反応する部分で、通常、この部分を活性化させるにはそれなりの努力が必要なのですが、喫煙する方の場合には、タバコを吸うだけでこの部分を活性化することが出来るのです。くせになるのもわかる気がします。
 しかも、継続的に喫煙していると、ニコチンが結合する受容体という分子の数が増え、その構造にも変化が生じ、ニコチンが常に存在するという状況が当たり前になってしまいます。こうなってくると、ニコチンが減ることにより、集中力の低下、眠気、緊張等、前述の作用と反対の作用が現れてしまうのです。これが離脱症状と言われるもので、この症状が現れる状態をニコチン依存症と言います。ニコチンを継続的に摂取することにより、体内に変化が生じ、ニコチン無しではいられない体になってしまうのです。
 さらに、この離脱症状を喫煙により和らげるということを繰り返していると、ストレスを感じたりした時に反射的にタバコを吸いたくなってきます。こうなると精神的にもニコチンに依存していると言えます。

4.喫煙による社会的影響
 実は、個人に対してこれだけの大きな悪影響を与える喫煙は、社会的にも大きな悪影響を及ぼしていることが明らかになってきました。それは、経済的損失、です。
 少し古いですが、1998年の報告によれば、米国では喫煙に起因する疾患に対する直接的な医療費だけで、タバコ製品の総売り上げの2.5倍に達していることが明らかになっています。これに加えて、これらの疾患に罹患することによる、就労日の損失、早期死亡や早期退職により想定される生産性の低下等を考慮すると、その損失規模は莫大なものになります。さらに、離脱症状による労働能率の低下やこれを軽減する為の喫煙時間なども考慮されるべきかもしれません。


次回予告ー知られざる受動喫煙の恐怖

次回は、受動喫煙を取り上げる予定です。
近年明らかになってきている受動喫煙の実態には恐るべきものがあります。現在行われている分煙や喫煙エリアの設置などはほとんど意味がないのではないかと考えさせられるほどです。「禁煙率が上がっているのに発がん率は下がらないから禁煙には意味が無い。」などという論調も時折耳にしますが、ナンセンスな議論だということがお分かり頂ける内容です。


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